日々、散文。好きなもの三昧。ナルトとか野球(巨/人・ワク)とかサッカー(俊/輔)とか(本誌ネタバレあり。ご注意ください)
Posted by りい。 - 2008.03.15,Sat
「ちょっと、快斗・・大丈夫?」
いつもと違う口調で臥せっている俺を覗き込むのは、幼馴染だ。
んだよ、そんな顔すんなって。
全然、平気。たいしたことねぇよ。
簡単に言えるはずの言葉が出て来ない。
なんか、世界が廻ってる。
「早退したほーがいいよ。ほら、すごい」
熱。
だからといって、変更することなんて出来なかった。
学校を早退して、家でひとり眠ることなく寝ていただけのベッドの上で掌を翳す。そして、握り締める。
大丈夫、出来る。
そう自分に言い聞かせて起き上がり、四角い窓から空を見上げる。
月。
満月ではない、三日月。
「・・・行こう」
もう、時間がない。
黒羽快斗の所為で、怪盗が予告を違えるなんてことがあってはいけない。
最悪、だった。
「頭・・ガンガンする」
ふと、僅かながらに零れた声に寺井ちゃんが反応する。
おやめになったほうが、と何度も言われたけど、手でそれは出来ない、と訴える。頬が妙に、熱い。世界がふら付く。
「せめて、お薬を」
「眠くなっちゃうからさ。ありがとう、寺井ちゃん。だいじょーぶだよ、ここからはちゃんと切り替えるから。寺井ちゃんは待機してて。なにかあったら、よろしく頼むよ」
「快斗坊ちゃま」
足が地についてないような感覚のまま、仕事へと向かおうとした俺を拾ったのは、寺井ちゃんだ。どこから聞いたのか、俺の体調の悪いことを知っての行動に、嬉しく思う。けど、甘えるわけにはいかない。お手伝いを、とも言われたけど、有り難く気持ちだけ受け取って丁重に断った。
「じゃ、いってくる」
「お気をつけて」
いつもながらも、声を背に飛び立つ。
向かうは、米花美術館。狙うは、ノニウスのブラックオパール。
息をひとつ吐いて、全てを切り替える。
ここから先、俺は黒羽快斗ではない。
世紀の大怪盗。名は、キッド。
「こらー!待てぇいキッド!!」
叫び声を聞きながら、適当な返答をしてから飛び立った。
警察の追撃を許すことなく、悠々と夜空を舞いながらも手にした宝石の確認は今日は無理だと判断する。三日月。月の光が弱い。風に伴って雲がやってくる。やっぱ今日は無理だと、高度を下げる。地上に降りたら寺井ちゃんに無事終わったことを告げよう。
全てが首尾よく終わった。
そう思ってしまったのが、多分駄目だったんだろう。
ふと、意識が黒羽快斗の俺に戻る。
地上に降りる、間際。
途端、視界がふら付く。騙していたものが一気に押し寄せてくるからたまったもんじゃない。
マントを翻す。真っ白から真っ黒へと装いを変えた瞬間、膝が折れた。
間違いなく、熱があがっている。
そうじゃなくても、あの青子に心配されるほどの熱だったのに、動き回った所為で更にあがってしまったから、廻るだけだった世界が歪む。意識が遠退きそうになる。やばい、と思って早く寺井ちゃんに所在を、と携帯を探ろうとした手は、目的を果たすことなく留まった。
「大丈夫か?」
背後から、手首を掴まれる。
ああ、嫌だな。
そう思ったのは、聞き覚えのある声だったから、だ。
つか、今日現場にはいなかったじゃん。
思考を掠ったのはそんなこと。
「おい?」
返答のない俺に疑問の声だけが掛けられる。それでも、掴まれた手首を振り解くことは出来なかった。全てがぼやけて、まともに働いてくれない。体も、頭も、なにもかも。
「・・・・顔、赤い。ちょっとごめん」
断りをいれてくるから、なんだろ?と思って沈みつつあった視界を無理矢理あげると其処には、蒼い瞳。すごく近くにあったそれに、驚いたはずなのに、やっぱ体は動いてくれないし、口からも声なんて出て来なかった。
触れた、額。
「お前すごい熱あるぞ。っておい?」
あー駄目、かも。逃げないととか、なんか言わないととか、色々思ってるのに駄目かもしんない。なにひとつ、実行にうつせない。
折れていた膝が更に折れる。掴まれてる手首を引っ張られる。トン、と胸元に抱き抱えられ、何度も問い掛けられる。
ふと気付くと遠くに聞こえていたはずのサイレンの音が、すごく間近に迫っていた。あれ?と思った瞬間、見知った、さっきまで見ていた顔が近寄ってきて、これってすっごくやばくね?と自分のことなのに、ドラマか映画でもみているかのような感じがして、ただ何も言えずに勝手に進むストーリーを客観的に見ているに過ぎなかった。
「中森警部?」
「工藤くんじゃないか?」
「どうしたんですか、こんなとこに?」
「キッドがこちら方面へ逃走したから追い掛けてきたのだが・・ん?快斗くんじゃないか!どうしたんだ?」
「・・・カイト、熱があるみたいで」
「大丈夫なのか?」
「いえ、大丈夫じゃないみたいですね」
目の前で起こっている現実。
俺の手首を掴んだままの名探偵は、キッドの件は知らない様子だ。なら、安心かも。でも、なんでだろう?
「家に送りたいとこなんですが、実は僕、カイトの家に行ったことがなくて」
「ああ、それなら」
だから、なんで?
「ありがとうございます。彼のことは僕が責任をもって送り届けますから、警部は仕事に戻ってください」
「すまんな、頼むよ工藤くん」
「はい」
だから、どうして?
なに、友達みたいな素振りしてんだ、この名探偵は?
初対面。間違いなく、黒羽快斗と工藤新一は初対面なはずなのに。
この会話はなに?
この展開はなんだ?
んだよ、そんな顔すんなって。
全然、平気。たいしたことねぇよ。
簡単に言えるはずの言葉が出て来ない。
なんか、世界が廻ってる。
「早退したほーがいいよ。ほら、すごい」
熱。
だからといって、変更することなんて出来なかった。
学校を早退して、家でひとり眠ることなく寝ていただけのベッドの上で掌を翳す。そして、握り締める。
大丈夫、出来る。
そう自分に言い聞かせて起き上がり、四角い窓から空を見上げる。
月。
満月ではない、三日月。
「・・・行こう」
もう、時間がない。
黒羽快斗の所為で、怪盗が予告を違えるなんてことがあってはいけない。
最悪、だった。
「頭・・ガンガンする」
ふと、僅かながらに零れた声に寺井ちゃんが反応する。
おやめになったほうが、と何度も言われたけど、手でそれは出来ない、と訴える。頬が妙に、熱い。世界がふら付く。
「せめて、お薬を」
「眠くなっちゃうからさ。ありがとう、寺井ちゃん。だいじょーぶだよ、ここからはちゃんと切り替えるから。寺井ちゃんは待機してて。なにかあったら、よろしく頼むよ」
「快斗坊ちゃま」
足が地についてないような感覚のまま、仕事へと向かおうとした俺を拾ったのは、寺井ちゃんだ。どこから聞いたのか、俺の体調の悪いことを知っての行動に、嬉しく思う。けど、甘えるわけにはいかない。お手伝いを、とも言われたけど、有り難く気持ちだけ受け取って丁重に断った。
「じゃ、いってくる」
「お気をつけて」
いつもながらも、声を背に飛び立つ。
向かうは、米花美術館。狙うは、ノニウスのブラックオパール。
息をひとつ吐いて、全てを切り替える。
ここから先、俺は黒羽快斗ではない。
世紀の大怪盗。名は、キッド。
「こらー!待てぇいキッド!!」
叫び声を聞きながら、適当な返答をしてから飛び立った。
警察の追撃を許すことなく、悠々と夜空を舞いながらも手にした宝石の確認は今日は無理だと判断する。三日月。月の光が弱い。風に伴って雲がやってくる。やっぱ今日は無理だと、高度を下げる。地上に降りたら寺井ちゃんに無事終わったことを告げよう。
全てが首尾よく終わった。
そう思ってしまったのが、多分駄目だったんだろう。
ふと、意識が黒羽快斗の俺に戻る。
地上に降りる、間際。
途端、視界がふら付く。騙していたものが一気に押し寄せてくるからたまったもんじゃない。
マントを翻す。真っ白から真っ黒へと装いを変えた瞬間、膝が折れた。
間違いなく、熱があがっている。
そうじゃなくても、あの青子に心配されるほどの熱だったのに、動き回った所為で更にあがってしまったから、廻るだけだった世界が歪む。意識が遠退きそうになる。やばい、と思って早く寺井ちゃんに所在を、と携帯を探ろうとした手は、目的を果たすことなく留まった。
「大丈夫か?」
背後から、手首を掴まれる。
ああ、嫌だな。
そう思ったのは、聞き覚えのある声だったから、だ。
つか、今日現場にはいなかったじゃん。
思考を掠ったのはそんなこと。
「おい?」
返答のない俺に疑問の声だけが掛けられる。それでも、掴まれた手首を振り解くことは出来なかった。全てがぼやけて、まともに働いてくれない。体も、頭も、なにもかも。
「・・・・顔、赤い。ちょっとごめん」
断りをいれてくるから、なんだろ?と思って沈みつつあった視界を無理矢理あげると其処には、蒼い瞳。すごく近くにあったそれに、驚いたはずなのに、やっぱ体は動いてくれないし、口からも声なんて出て来なかった。
触れた、額。
「お前すごい熱あるぞ。っておい?」
あー駄目、かも。逃げないととか、なんか言わないととか、色々思ってるのに駄目かもしんない。なにひとつ、実行にうつせない。
折れていた膝が更に折れる。掴まれてる手首を引っ張られる。トン、と胸元に抱き抱えられ、何度も問い掛けられる。
ふと気付くと遠くに聞こえていたはずのサイレンの音が、すごく間近に迫っていた。あれ?と思った瞬間、見知った、さっきまで見ていた顔が近寄ってきて、これってすっごくやばくね?と自分のことなのに、ドラマか映画でもみているかのような感じがして、ただ何も言えずに勝手に進むストーリーを客観的に見ているに過ぎなかった。
「中森警部?」
「工藤くんじゃないか?」
「どうしたんですか、こんなとこに?」
「キッドがこちら方面へ逃走したから追い掛けてきたのだが・・ん?快斗くんじゃないか!どうしたんだ?」
「・・・カイト、熱があるみたいで」
「大丈夫なのか?」
「いえ、大丈夫じゃないみたいですね」
目の前で起こっている現実。
俺の手首を掴んだままの名探偵は、キッドの件は知らない様子だ。なら、安心かも。でも、なんでだろう?
「家に送りたいとこなんですが、実は僕、カイトの家に行ったことがなくて」
「ああ、それなら」
だから、なんで?
「ありがとうございます。彼のことは僕が責任をもって送り届けますから、警部は仕事に戻ってください」
「すまんな、頼むよ工藤くん」
「はい」
だから、どうして?
なに、友達みたいな素振りしてんだ、この名探偵は?
初対面。間違いなく、黒羽快斗と工藤新一は初対面なはずなのに。
この会話はなに?
この展開はなんだ?
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